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開幕レポート

2025/3/14

 
開幕レポート

脚本:小林靖子×演出:朴璐美×振付・ステージング:森山開次——各界の精鋭が結集し、平家一門の栄光と没落を新たなかたちで描き出す、『平家物語 ―胡蝶の被斬―』が3月14日に開幕。

初日を記念して、清盛役をダブル主演する山路和弘と山寺宏一から、コメントが到着した。

 

【平清盛役 山路和弘】

 

●いよいよ開幕ですが、お気持ちは?

天才・山寺さんと同じ清盛役をやらせていただく喜びがあります。

Wキャスト二人で、全く違ったものになると感じています。

違うが、それぞれの良さが感じられる…そんな舞台になると思っています。

 

●お客様に楽しみにしてほしい部分、注目してほしい部分などあれば

脚本の小林靖子さん、演出の朴璐美さん、振付・ステージングの森山開次さん、お三方の組み合わせが非常に活きた舞台になっています。

ご覧になる方々には、このタッグが存分に活きた舞台を楽しみにしてほしいと思います。

 

【平清盛役 山寺宏一】

 

●いよいよ開幕ですが、お気持ちは?

自分でも大きなチャレンジなのでドキドキとワクワクで一杯ですね。正直に言うと、ドキドキが8割、ワクワクが2割。

普段は朗読であれば何でも、どんな役でも来い!と思うのだけど、今回はお芝居も含み、まさか自分が動きのある芝居で平清盛を演じるとは…なので、ドキドキ8割という感じですね(笑)

 

●お客様に楽しみにしてほしい部分、注目してほしい部分などあれば

マルチパフォーマーとダンサーが魅せる、八面六臂の大活躍にご期待ください。

稽古中、森山開次さんのきめ細やかな優しさには皆が助けられましたし、情熱的な朴璐美さんの姿は、数々の共演の中でも『演出家としての姿が一番格好良い』と思わされる程でした。

大尊敬する山路さんとのWキャストでプレッシャーもありますが、負けないように頑張ります!

写真ギャラリー
(写真提供:読売新聞社)

稽古場レポート

稽古場レポート

2025/3/7

 

読売新聞事業局記者で、コメンテーターとしても数々のテレビ番組に出演歴のある鈴木美潮。特撮に精通する一面もある同氏が「平家物語-胡蝶の被斬-」の稽古場に赴き現場をレポート!

舞台上に「見たことのない景色」

新しい挑戦の平家物語

 読売新聞事業局記者・鈴木美潮

写真提供:読売新聞社

 

14日から新国立劇場中劇場(東京都渋谷区)で上演される「平家物語―胡蝶の被斬(きられ)―」の稽古が佳境に入った3月某日、都内で行われた通し稽古を見学するため、稽古場を訪れた。

 

本作は、平家の栄華と没落を描いた古典の名作「平家物語」をベースにしたもの。スーパー戦隊シリーズなどで特撮ファンにはお馴染みの脚本家、小林靖子さんが初めて本格的に舞台の台本を手がけ、靖子さんが台本を書いた「侍戦隊シンケンジャー」で薄皮太夫を好演したことでも知られる朴璐美さんが演出を担当、さらに能や雅楽など和とのコラボレーションも多いダンサーで振付家の森山開次さんが振付・ステージングを担っている。声優が多くを占める出演者が台本を手に演じる内容だが、単なる「朗読劇」ではなく、芝居と朗読、舞踊を融合させた「総合舞台芸術」を標榜している。その意味が、実はあまりよく理解できていなかったのだが、朴璐美さんの「みんな、呼吸を合わせるんだよ!」の呼びかけとともに始まった稽古を見て、なるほど、そういうことか、と膝を打った。

 

そこに広がっていたのは、見たことのない景色だった。

人の声の持つ力強さを実感

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舞台にメインの出演者たちが現れる。台本を手にはしているが、すでに立ち姿、座り姿から役のオーラが漂う。声優が多いこともあってか、難解な台詞もくっきりと際立ち、わかりやすい。人間の声の持つ力の強さに、改めて驚かされる。言葉が発されるたびに、文字で書かれた美しい台詞たちが命を得て、ひとつ、また一つと像を結んでいくさまは圧巻だ。

 

メイン出演者の周りにはオーディションで選ばれたというマルチパフォーマーやダンサーたちが登場する。平家物語の一節を唱和したり、民衆になって打ち寄せたりする。パフォーマーたちのうねるような動きは、時に群衆になり、武者となり、波となって、物語の世界の空気を作り上げていく。声の重なりも耳に快い。大がかりな舞台装置はないのに、平安時代末期の、雅でありながら、どこか血なまぐさく荒涼たる風景が見えてくる。

日替わりで違う役者によって演じられる芝居で、この日、平清盛を演じていたのは山路和弘さん。

栄華を極めた権力者の、強いだけではなく、空しさの漂う複雑な心のうちを冒頭から打ち付けるように演じて、見る側の心を鷲掴みにする。

清盛の妻、時子役の麻実れいさんはさすがの風格で滅び行く平家の悲哀をしっかりと表現する。

清盛の長女徳子を演じる咲妃みゆさんはどこまでも可憐なのに、しなやかで強い。

長男、重盛を演じる湖月わたるさんは、座っているだけで凜々しく高貴で、まるで武者絵を見ているようだ。

三男、宗盛役の関智一さんが発する悲痛な叫びには、飛び交う矢や身につける鎧甲までが見えてくるし、五男、重衡の島崎信長さんからは、時代に翻弄された平家一族の悲しみがにじみ出てくる。

一方、井上和彦さんが演じる後白河法皇は、老獪な権力者なのに、どこか愛嬌があって憎めない。全日程通して西光法師を演じる西凜太郎さんは、法皇に侍る高僧を憎々しく、力強く表現する。

まったくの余談で恐縮だが、この日、西さんが着ていたのが「五星戦隊ダイレンジャー」30周年記念Tシャツだったことも、特撮ファンの記者としては記録しておきたい。(西さんは同作に敵役で出演していた)

肉体も雄弁に語る

さらに、梶田留以さんら4人のダンサーの肉体の表現力も雄弁だ。琵琶や尺八の生演奏を背景に、風のように舞い、舞台の景色を御所から福原の海に浮かぶ船、都大路へと次々に塗り替え、そこに漂う人間の業をも表現していく。森山さんは、ダンサーだけでなく、出演者の立ち位置をも数センチ単位で見極めて調整する。ほんの一歩、出演者が右や左に動いただけで、舞台の見え方ががらりと変わることに驚かされた。

 

途中から、出演者が台本を手にしているかどうかは、全く意識しなくなっていた。台本があろうとなかろうと、そこには確かに平家一族がいたし、壇ノ浦での悲劇が見えた。朗読とか芝居とか、舞台芸術をジャンルづけることなど、芝居の説得力の前には全く無意味だろう。気がつけば物語の世界に引き込まれ、2時間ほどがあっという間だった。

 

朴璐美さんは読売新聞本紙のインタビューで(1月22日夕刊)、本をおとなしく読むような朗読劇ではなく、「新しい芝居」を目指したいという趣旨の抱負を語られている。その言葉通りの挑戦をしていることが痛いほど感じられた。素の電灯だけの稽古場での通し稽古でこの迫力なのだから、照明が入り、衣装をつけ、効果音が完成したら、どこまで膨らんでいくことだろうか。

 

14日から17日までの公演は、残席僅かと聞く。ひとつのジャンルに収まりきらないこの新しい挑戦の舞台を、多くの方に生で体感していただきたい。

プロフィール 鈴木 美潮( すずき・みしお )

読売新聞事業局記者。1989年入社。政治部、文化部、メディア局編集委員、教育ネットワーク事務局専門委員などを経て現職。日本テレビ「イブニングプレスdonna」(キャスター)「ラジかる!!」(コメンテーター)「PON!」(同)や、ラジオ日本「美潮シネマズ」などに出演。特撮ヒーロー(特に仮面ライダーとスーパー戦隊シリーズ)が大好きで特撮関係者を招いてのイベント「340(みしお)Presents」を2003年より主宰。著書に「昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか」(集英社文庫)、「スーツアクターの矜恃」(集英社インターナショナル)。また、美空ひばりさんの大ファンで、2021年は33回忌法要ツアーの司会を務めた。読響アンサンブルシリーズプレトーク司会も担当している。

稽古場レポート

読売新聞事業局記者で、コメンテーターとしても数々のテレビ番組に出演歴のある鈴木美潮。特撮に精通する一面もある同氏が「平家物語-胡蝶の被斬-」の稽古場に赴き現場をレポート!

舞台上に「見たことのない景色」

新しい挑戦の平家物語

 読売新聞事業局記者・鈴木美潮

写真提供:読売新聞社

 

14日から新国立劇場中劇場(東京都渋谷区)で上演される「平家物語―胡蝶の被斬(きられ)―」の稽古が佳境に入った3月某日、都内で行われた通し稽古を見学するため、稽古場を訪れた。

 

本作は、平家の栄華と没落を描いた古典の名作「平家物語」をベースにしたもの。スーパー戦隊シリーズなどで特撮ファンにはお馴染みの脚本家、小林靖子さんが初めて本格的に舞台の台本を手がけ、靖子さんが台本を書いた「侍戦隊シンケンジャー」で薄皮太夫を好演したことでも知られる朴璐美さんが演出を担当、さらに能や雅楽など和とのコラボレーションも多いダンサーで振付家の森山開次さんが振付・ステージングを担っている。声優が多くを占める出演者が台本を手に演じる内容だが、単なる「朗読劇」ではなく、芝居と朗読、舞踊を融合させた「総合舞台芸術」を標榜している。その意味が、実はあまりよく理解できていなかったのだが、朴璐美さんの「みんな、呼吸を合わせるんだよ!」の呼びかけとともに始まった稽古を見て、なるほど、そういうことか、と膝を打った。

 

そこに広がっていたのは、見たことのない景色だった。

人の声の持つ力強さを実感

IMG_4975.jpg
all2-2shimazaki_kozuki_asami_sakihi★_seki.png

舞台にメインの出演者たちが現れる。台本を手にはしているが、すでに立ち姿、座り姿から役のオーラが漂う。声優が多いこともあってか、難解な台詞もくっきりと際立ち、わかりやすい。人間の声の持つ力の強さに、改めて驚かされる。言葉が発されるたびに、文字で書かれた美しい台詞たちが命を得て、ひとつ、また一つと像を結んでいくさまは圧巻だ。

 

メイン出演者の周りにはオーディションで選ばれたというマルチパフォーマーやダンサーたちが登場する。平家物語の一節を唱和したり、民衆になって打ち寄せたりする。パフォーマーたちのうねるような動きは、時に群衆になり、武者となり、波となって、物語の世界の空気を作り上げていく。声の重なりも耳に快い。大がかりな舞台装置はないのに、平安時代末期の、雅でありながら、どこか血なまぐさく荒涼たる風景が見えてくる。

日替わりで違う役者によって演じられる芝居で、この日、平清盛を演じていたのは山路和弘さん。

栄華を極めた権力者の、強いだけではなく、空しさの漂う複雑な心のうちを冒頭から打ち付けるように演じて、見る側の心を鷲掴みにする。

清盛の妻、時子役の麻実れいさんはさすがの風格で滅び行く平家の悲哀をしっかりと表現する。

清盛の長女徳子を演じる咲妃みゆさんはどこまでも可憐なのに、しなやかで強い。

長男、重盛を演じる湖月わたるさんは、座っているだけで凜々しく高貴で、まるで武者絵を見ているようだ。

三男、宗盛役の関智一さんが発する悲痛な叫びには、飛び交う矢や身につける鎧甲までが見えてくるし、五男、重衡の島崎信長さんからは、時代に翻弄された平家一族の悲しみがにじみ出てくる。

一方、井上和彦さんが演じる後白河法皇は、老獪な権力者なのに、どこか愛嬌があって憎めない。全日程通して西光法師を演じる西凜太郎さんは、法皇に侍る高僧を憎々しく、力強く表現する。

まったくの余談で恐縮だが、この日、西さんが着ていたのが「五星戦隊ダイレンジャー」30周年記念Tシャツだったことも、特撮ファンの記者としては記録しておきたい。(西さんは同作に敵役で出演していた)

肉体も雄弁に語る

さらに、梶田留以さんら4人のダンサーの肉体の表現力も雄弁だ。琵琶や尺八の生演奏を背景に、風のように舞い、舞台の景色を御所から福原の海に浮かぶ船、都大路へと次々に塗り替え、そこに漂う人間の業をも表現していく。森山さんは、ダンサーだけでなく、出演者の立ち位置をも数センチ単位で見極めて調整する。ほんの一歩、出演者が右や左に動いただけで、舞台の見え方ががらりと変わることに驚かされた。

 

途中から、出演者が台本を手にしているかどうかは、全く意識しなくなっていた。台本があろうとなかろうと、そこには確かに平家一族がいたし、壇ノ浦での悲劇が見えた。朗読とか芝居とか、舞台芸術をジャンルづけることなど、芝居の説得力の前には全く無意味だろう。気がつけば物語の世界に引き込まれ、2時間ほどがあっという間だった。

 

朴璐美さんは読売新聞本紙のインタビューで(1月22日夕刊)、本をおとなしく読むような朗読劇ではなく、「新しい芝居」を目指したいという趣旨の抱負を語られている。その言葉通りの挑戦をしていることが痛いほど感じられた。素の電灯だけの稽古場での通し稽古でこの迫力なのだから、照明が入り、衣装をつけ、効果音が完成したら、どこまで膨らんでいくことだろうか。

 

14日から17日までの公演は、残席僅かと聞く。ひとつのジャンルに収まりきらないこの新しい挑戦の舞台を、多くの方に生で体感していただきたい。

プロフィール 鈴木 美潮( すずき・みしお )

読売新聞事業局記者。1989年入社。政治部、文化部、メディア局編集委員、教育ネットワーク事務局専門委員などを経て現職。日本テレビ「イブニングプレスdonna」(キャスター)「ラジかる!!」(コメンテーター)「PON!」(同)や、ラジオ日本「美潮シネマズ」などに出演。特撮ヒーロー(特に仮面ライダーとスーパー戦隊シリーズ)が大好きで特撮関係者を招いてのイベント「340(みしお)Presents」を2003年より主宰。著書に「昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか」(集英社文庫)、「スーツアクターの矜恃」(集英社インターナショナル)。また、美空ひばりさんの大ファンで、2021年は33回忌法要ツアーの司会を務めた。読響アンサンブルシリーズプレトーク司会も担当している。

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 受付時間 : 平日12:00~15:00(※土日祝休業)

©『平家物語 ―胡蝶の被斬―』 製作委員会

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